ヘビメタパパの書斎 › 2021年05月

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2021年05月31日

魅惑のシナジー

「あのバンドのあの人と、あのバンドのあの人が組みました。で、音楽は期待通りの音です」
的なユニットバンドが増えてきています。

昔と違い、レコーディングも直接顔を合わせなくてもできる時代。
さらにコロナ禍という状況もあるのかもしれません。

このバンドもそれに類する。
「あぁ、最近よくあるやつね。今回はそういう組み合わせね」という程度でしたが、そのサウンドは‥


OUT OF THIS WORLD [OUT OF THIS WORLD]




2021年リリース。

タイトルを聞いて「お!」と思った方はそこそこの古参でしょうか。私と同世代でしょうかね。仲良くしましょう。

そう、あのEUROPEの大ヒット作である[THE FINAL COUNTDOWN]の次作としてリリースされた[OUT OF THIS WORLD]
そのアルバムが1988年リリースですから、もう30年越えてるんですねぇ。

個人的には大好きなアルバムですが、世間的には問題作として認識されていることも多く、あのB!誌では「?点」という伝説を残しました。
そのアルバムから、脱退したジョン・ノーラムの後任として参加したのがキー・マルセロでした。

このバンドで、そのキー・マルセロと組んだのが元FAIR WARNINGトミー・ハート

どうですか。
あの「HR/HMを忘れたカナリア」と言われた時代のEUROPE+メロディックハードの旗手であったFAIR WARNING
なんとなく、ボンヤリと、「あぁ、あんな感じの音なのかな」と思い浮かんだのではないでしょうか。


その音です。
はい、その音です。

その音ですが、そのクオリティは単なる「ユニット」のバンドとして括ってはもったいないクオリティ。

FAIR WARNINGのメロディ(というか、トミー・ハートの声を活かすメロディ)。
EUROPE「北欧からの脱却」「世界(というかアメリカ?)で勝負するため」のメロディ。
そのいいとこどりが、双方の魅力を打ち消すことなく相乗効果を生み出しています。


オープニングを飾る[TWILIGHT]
華やかなシンセサイザーに導かれ、瑞々しく弾けるように、踊るように展開していくメロディ。

キー・マルセロのリフは強い存在感を放ちながらも暖かい。
トミー・ハートのヴォーカルは以前からの魅力を放ちながらも自然体。

サビのバックで流れるキーボードも心地いい。
久しく忘れていた「ハードポップ」という言葉が脳裏をよぎる。
この感覚‥そう、TERRA NOVAで味わった清涼感に近いものがあります。


続く[HANGING ON]は、そのミディアムなリズム感と涼しげなメロディ、そしてゴージャスなコーラスが印象的。
そして切なげな[IN A MILLION YEARS]
このあたりは、全盛期(個人的には1st~3rd)のFAIR WARNINGを思わせます。

太陽が燦々と降り注ぐかのようなイントロから欧州メロハーの王道的な[LIGHTING UP MY DARK]
キー・マルセロのギターソロが眩しい。

AOR的オープニングがワクワクを誘う[AIN'T GONNA LET YOU GO]
このあたりはアリーナロックのようなスケールを感じさせます。
とはいえ、やはり美しいコーラスが彩るサビはこのコンビならでは。

エンディングを飾るバラード[NOT TONIGHT]
個人的に「名バラードメーカー四天王」と呼んでいたのがTNT、HAREM SCAREM、FIREHOUSE、そしてFAIRWARNINGだ。
だから、「トミー・ハートが歌うバラード」にめっぽう弱い。
だけど、もちろんそれは曲のクオリティが伴ってこそ、だ。

このバラードも、トミーの魅力が存分に堪能できる。
トミーの情感が曲からこぼれ落ちるような、滴り落ちるような、そんな魅力。
FAIR WARNING時代と比べればライトな触感の曲ではありますが、それを比較するのはナンセンス。曲として素晴らしいからいいのだ。


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ということで、[OUT OF THIS WORLD]時代のEUROPEが許容できる人や、FAIRWARANINGが好きだった人は必聴。
とくにオススメしたいのはTERRA NOVAが好きだった人。きっとドンピシャだと思います。

こういったユニットがどの程度継続するのか、どういった「バンド」なのか不透明なところはありますが、ぜひとも継続してほしい。
双方の魅力がぶつかり合い新たな輝きを放ちまくる。
想像以上の良盤となりました。


OUT OF THIS WORLD Updated Album Trailer 2021 Feat. TOMMY HEART and KEE MARCELLO

※アルバムトレイラーしかありませんでした‥



  

Posted by テン at 07:18Comments(0)O

2021年05月10日

渾身の一撃

「渾身」‥からだ全体。全身。満身。
このアルバムを聞いて、まずその言葉が脳裏をよぎりました。

RONNIE ATKINS [ONE SHOT]




デンマーク出身のメロディックメタルバンド、PRETTY MAIDSのフロントマン。

1stアルバムである[Red Hot and Heavy]をリリースしたのが1984年
活動は35年を越えた。

私はPRETTY MAIDSに出会ったのは3rdである[Jump the Gun]でした。
そして私にとってとても大切なバンドであり続けています。

そんな中。
ロニーが癌で闘病中であったこと。
そして現在ステージ4であること。
本人も「それは原則、治療不可能だ」と語っていること。
ヘヴィメタル界に大きな衝撃が走りました。

ロニーはそれを受け入れ、その上で新しい音楽を発表する道を選びました。
それがこのソロアルバム。

正直なところ、ここ数作のPrettyMaidsは私の中では「悪くないんだけど‥」という感覚のアルバムが多かった。
それは、やはり私が愛していた時代の[Back to Back][Future World][Sin-Decade][Spooked]といった強烈なインパクトが脳裏に焼きついているからだと思う。
過去を懐かしんでも仕方ないことなのですが、どうしてもその衝撃は消えないのです。

だから、今回のソロアルバムも最近のバンドの路線に近いんだろうなと思っていた。
センチメンタルな感傷だけが残ってしまうのではないかと危惧していた。

が。
ごめんロニー。
あなたの才能を信じきれていなくてごめんなさい。

そんな感傷的な気分は必要ない。
ひとつの作品として冷静に見ても素晴らしいアルバムになっています。

基本的にはPrettyMaidsのひとつの側面として以前から魅力を放っていた、キャッチーでメロウなメロディをさらにワイド&ディープにした‥というのが一番例えやすいでしょうか。
しかし、一曲一曲に宿る生命力が、ガッツが、スピリットが、リスナーの耳を捉え、胸を抉ります。

ソフトでナチュラルなヴォーカルに導かれて幕を開ける[Real]
PrettyMaidsという大きな看板を肩から降ろし、まさに彼のリアルが投影されたかのような曲。
Europeのフロントマンであるジョーイ・テンペストのソロアルバム[Place To Call Home]を思い出しますね。
この一曲を聞いただけで、何かを悟り、受け入れ、解き放たれたかのような落ち着きと強さを感じます。

ちょっとPrettyMaidsっぽさを漂わせる[Scorpio]を経て‥

続く[One Shot]は、まさに魂の唄だ。2021年のベストチューン候補だ。
♪ One shot One life , One chance to throw the dice
♪ One love two hearts , One go to play our parts in life

ロニーはまだ諦めていない。自分自身ができることに全力で立ち向かい、自らとファンにエールを送るかのようだ。
ファンが諦めてどうするんだ!

まるでFairWarningの2ndあたりを思わせる、心地よい湿度と熱気が入り交じる[Subjugated]
こういった曲で柔和に歌いあげるロニーの声も実に魅力的なのです。

このアルバムの中ではやや異彩を放つ、ソリッドなリフが印象的な[Before The Rise Of An Empire]
やはりハードロック然とした曲での存在感はさすがだ。

ラストを飾る[When Dreams Are Not Enough]は、80年代のアリーナロックを思わせるメロディ。
美しく夕陽が沈んでいくかのような心地よいエンディングを演出してくれます。


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ということで、最近のPrettyMaidsが物足りなく感じている人にこそ、このアルバムを聞いてほしい。
きっと、ロニーの「渾身の一撃」に震えることでしょう。

そしてPrettyMaidsを聞いたことがない人でも、良質なメロディックハードロックとしてお勧めしたい。
様々な声色を使い分け、ソウルフルに歌いあげるロニーのヴォーカルに胸を打たれると思う。

そして改めて、ロニーアトキンスという才はまだ枯れてはいけない。失ってはいけない。
ファンはロニーが進もうとしている轍を、信じてその背中を押してあげたいと思うのです。
がんばれ。ロニー。


Ronnie Atkins (Pretty Maids) - "One Shot" - Official Music Video








  

Posted by テン at 07:30Comments(0)R