ヘビメタパパの書斎 › 2017年12月18日

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2017年12月18日

その後の世界

一つの「頂」へ到達した感があった前作。
次はどんな一手を打ってくるのかという期待と不安が入り混じっている中。
まさかの前作の流れを汲むコンセプトアルバムです。

GALNERYUS - ULTIMATE SACRIFICE




大阪出身。
日本が誇る、正統派ジャパニーズヘヴィメタルの最高峰‥と言ってしまってもいいでしょう。

wikiによるとこのアルバムが11枚目‥11枚!? 早いものですねぇ。
そして"SHO"こと小野正利が加入して6枚目‥初代ヴォーカリストであるYAMA-B時代を上回ったわけですね。感慨深いものがあります。

このアルバム発売を前にドラムが交代。
なんとUnlucky Morpheus THOUSAND EYES で活躍するFUMIYAが加入しました。

さらにはこのアルバムは大手レーベル、ワーナー・ミュージックからのリリース。

‥と、このアルバムは節目としても大きな意味を持つことになりそうです。


冒頭に述べた通り、前作[UNDER THE FORCE OF COURAGE]はGALNERYUSの歴史の集大成のようなアルバムでした。
過去の歴史すべてを俯瞰しつつ、濃密に圧縮して昇華させたような強靱な魂に満ちたアルバムでした。

おそらく、次のアルバムはその密度を解き放ち、自由奔放、小野さんのヴォーカルスタイルを生かしたワイドな方向性へ走るのではないかと勝手に想像していました。

が。

その[UNDER THE FORCE OF COURAGE]の世界観を受け継ぎ、「その後の世界」を描いたという今作。
スタイルは前作同様、シリアスな世界の中で展開していくコンセプトアルバムになっています。

あれだけクオリティの高いアルバムの後で、似たような方向性を目指してしまって大丈夫なのか。
まさか二番煎じになったりしないのか。
若干のマンネリを感じたりしないのか。

様々な不安が脳裏をよぎっていましたが‥すべて杞憂に終わりました。

素晴らしいです。
今作も素晴らしいです。

前作と同じようなスタイルを取っていながら、全く違うアルバムとして存在しています。
ガルネリウスの歴史を語っていく上での「両輪」となるような気がします。

単純に直感として感じたのは
・インパクト、激動の中で壮大なストーリーを描いた前作
・濃密な悲哀の中で深い深い情念を描いた今作
といった印象でしょうか。

直感的に訴えてくるのは前作。
聞けば聞くほど深みに沈んでいくのが今作。

実際、最初に聞いたときにはなんだか「突き刺さる」ものが前作より弱い気がしましたが、聞いている期間、聞いている回数は圧倒的に前作を凌ぐ。
いわゆる典型的「スルメ盤」だと思います。


そうして聞いている中でジワジワと浸透してくる今作の魅力。
それは「歌詞」にあると思う。

言葉の選び方、紡ぎ方。
曲とのフィット感。
SYUのギターの泣きのメロディに、慟哭の歌詞を歌いあげる小野さんの声が乗る。
この相乗効果は過去屈指の魅力だと思うのです。

イントロ[ENTER THE NEW AGE]に導かれ、幕を開ける[HEAVENLY PUNISHMENT]
リリース前から「このタイトル‥絶対名曲に決まってるやん‥絶対間違いないやつやん‥」という期待がパンパンに膨らんでいたわけですが、そのパンパンの期待を余裕で上回ってきます。
FUMIYAのインパクトのあるドラム、小野さんの絶唱。そしてSYUのギターが追いかけてくる。
最初に聞いて、「オープニングチューンとしては[RAISE MY SWORD]ほどじゃないかな‥」と感じたわけですが、聞けば聞くほどすべての魅力が詰まった名曲であり、今では彼らの歴史の中でも指折りの名曲じゃないかというほど大好きな曲です。

「また巡りゆく、運命が螺旋の様に」
「もがき続ける、未だ哀しみの渦の中で」
「見上げ想いを馳せる空、繰り返し問いかける宿命、いつか掲げた立ち上がる意味は、今もこの大地に轟いてゆく。」


さきほど、このアルバムの「歌詞」の魅力を書きましたが、まさにこの曲が象徴的。

続く[WINGS OF JUSTICE]はGALNERYUS史上、最速の部類に入るでしょうか。
爪弾かれるリフは初期のSONATA ARCTICAを思わせます。
小野さんの「Ahhhhhhhhh........!!」の叫び。魂の叫びです。

後半では7分→11分→12分‥という大曲が続きます。
長尺な曲が大好きな私にとってはたまらない構成です。

[RISING INFURIATION]は、このアルバムの「起承転結」でいうところの「転」に位置するでしょうか。
ストーリーが後半に向けて加速していく手前の葛藤を描いているかのような、時折不協和音のようなテクニカルな展開を持ちます。

[BRUTAL SPIRAL OF EMOTIONS]は三部構成。
倒れそうになりながらも立ち上がっていくかのような力強さに満ちた曲になっているように感じます。
「今にも張り裂けそうな想いを嘘に変えてくれるなら、苦境の全てに身を投じるだろう」
「今にも崩れそうな想いを嘘に変えてくれるなら、絶望の淵でも絶えず抗うだろう」

この曲での歌詞も印象的なのですが、「投じるだろう」「抗うだろう」のリズムがたまりません。
静かに紡がれるパートも美しくも切ない。ラストへ向けての大きな布石として存在しています。

そして最後を飾る[ULTIMATE SACRIFICE]へ。
美しいピアノとシンフォニックな音色に導かれ、クライマックスへ向かっていきます。
前作のラストを飾る組曲[UNDER THE FORCE OF COURAGE]に近い世界観を感じますが、より歌詞の「クライマックス」感が強いように感じます。
リフやサビは典型的な「ガルネリ節」と言えると思いますが、そうでありながら孤高の感を感じるのは、やはり歌詞の魅力でしょうか。

「今願うならば、この時間を戻して、約束の地へ駆けるだろう。これ以上何を失えば赦されるのだろう。」
「今叶うならば、この手を差し出して、消え去った過去を掴むだろう。」
「今願うならば、この時間を戻して、あの手をもう離さないだろう。吐き出した全ての想いは解き放たれゆく。」
「今叶うならば、あなたのその影を、もう一度だけ思い出して、何も求めるものなど無く、穏やかな温もりの中でただ笑い合っていたい。」

この曲の一部はMVとして事前に公開されていましたが、この曲を選んだバンドの意図を感じ取るのも面白いところかもしれません。

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ということで、珍しくたくさんの歌詞をそのまま貼り付けてしまいました。
そのくらい、私にとってこのアルバムの「歌詞」は大きな意味を持ち、前作との違いを如実にし、このアルバムの魅力の魅力に大きく寄与しています。


前作のときにも書いたかもしれませんが、ずっと好きだったファンにとっては前作に続いて圧倒的傑作として存在し続けるのではないでしょうか。
バンドの底力、ポテンシャルに敬服してしまいます。

が、このバンドのことを知らない人に勧めるかというと、ちょっと濃密すぎるのではないかとも感じます。
そろそろ賛否両論あった[VETELGYUS]のような路線の、「メタルを知らない人でもその魅力を伝えられる」ようなアルバムも聞いてみたいなと感じたりもします。
まぁ、そういう曲を書くこともできるSYU、そういう曲でも圧倒的な魅力を放ってくれる小野さんがいてくれるからこその贅沢な悩みですが。

GALNERYUS「ULTIMATE SACRIFICE」Official MV


















  

Posted by テン at 07:18Comments(0)国産