ヘビメタパパの書斎 › 2017年03月

スポンサーリンク

この広告は一定期間(1ヶ月以上)更新のないブログに表示されます。
ブログ記事の情報が古い場合がありますのでご注意下さい。
(ブログオーナーが新しい記事を投稿すると非表示になります。)
  

Posted by at

2017年03月24日

去りぎわの美学

波瀾万丈だったな‥と思う。
一度、ビッグなスポットライトを浴びてしまい、その印象から脱しきれぬまま、このときを迎えてしまった感がある。

これが最後の作品、らしい。
そして皮肉なことに、実に彼ららしいアルバムに仕上がっているのだ。

NELSON [Peace Out]




2015年リリース。
マシュー・ネルソン&ガナー・ネルソンという美男子兄弟によるアメリカンハードロックバンド。
この作品が9枚目でしょうか。

デビューで脚光を浴びたアルバムがリリースされたのが1990年。
‥いつまでも若々しい印象がありますが、もう四半世紀でしたか‥。

彼らが登場したCM「宝酒造 純」を記憶してらっしゃる方はワタシと同年代でしょうかね。
そして、その頃の彼らを知っている人は意外と(というと失礼ですが)多い気がします。

瑞々しく、甘く、キャッチー。

彼らのルックスもその音楽性を後押しし、一気にスターダームの座へ。
‥と言っても、その甘さゆえ、ガチガチのメタラーからは叩かれた印象もありますが。

そういった外見的な要素や先入観もあってか、逆に足を引っ張られた感もありますが、初期のアルバムは充実していました。

が。

その強すぎる印象から、少しヘヴィな曲を書いただけで「違う。あの彼らじゃない」とソッポを向かれ‥。
いや、その頃のアルバムも良かったんですがね。
最初の印象が強すぎて、メタラーからはもともと目の敵にされ、初期のファンは少し離れていき‥という負のスパイラルに陥っていた気がします。

その後は一気にカントリー方面へ舵を切り、「あー、そっち方面へ行っちゃったか」という落胆もありつつ、それでもやはり彼ら流の輝きは見え隠れしていました。
が、さすがに初期のメロディックハーロドック路線は期待できないな‥と踏ん切りをつけたファンも多いことでしょう(←ワタシです)

そして、「NELSONのアルバムとしては最後になる」とアナウンスされてリリースされたこのアルバム。

これが実に素晴らしいのだ。

初期の煌き。透明感。
四半世紀を経て自然と滲み出る貫祿。
紆余曲折を経た余裕から生まれるスケール感。

初期の瑞々しさを残しつつも、燻銀の落ち着きを感じさせる、という、奇跡的なバランスが構築されています。
もちろん、その芯であり核となるのは、彼らが持ち合わせたメロディセンスと美しいハーモニー。

「おいおい、最後の最後にコレかよ‥」という、驚きや、喜びや、これで最後だという落胆と心残りがフクザツに絡み合います。


オープニングを飾る[Hello Everybody]
まるでバンドのデビューアルバムのオープニングトラックであるかのような歌詞と躍動感。
彼らの真骨頂である美しいコーラスも満載。
とてもラストアルバムとは思えないポジティブさを撒き散らしながらアルバムはスタートします。

ダイナミズムに満ちた[Back in the Day]
アメリカンハードロックの王道とも言える曲調。とろけそうな甘さを醸しだしていた初期とは異なり、スケールアップした彼らの「今」を聞くことができます。

ややトンガった印象を伴いつつも、やはりサビの美しさが際立つ[Rockstar]

心地よいカラっとした疾走感が心地いい[Autograph]
こういう路線は今までありそうで無かったのではないでしょうか。
まだまだ彼らの可能性は広がっている。
このままフェードアウトしていくのは惜しい。残念すぎる。
そう思わせてくれる曲です。

まるでFIREHOUSEを思わせるようなエッジを感じさせる[Bad for You]
いい意味で、吹っ切れてるなと感じます。

穏やかにラストを飾る[Leave the Light on for Me]
肩の力が抜けた、自然体の彼らの姿が見えてきます。
適度に感傷的に、適度にハッピーエンド。



そう。

このアルバムに漲るのは「ハッピーエンド」感だなと感じます。

冒頭に触れたように、波瀾万丈だったと思う。
音楽性、方向性もいろいろ模索してきた。

が、最後の最後に、最も彼ららしいと思えるアルバムを造り上げた。

アルバムのタイトル。
アルバムのジャケット。
アルバムの音楽の素晴らしさ。

勿体ないと思う。
まだまだ才能は枯渇していないと思う。

けど、なんだか「あー、これで良かったのかもしれない」と思わせてくれるアルバムだ。
「多幸感」が溢れているのだ。

これだけのハッピーエンド感をもってバンドに幕を下ろすバンド、幕を下ろせるバンドは、あまりない。

華やかに登場し、美しくさりげなく表舞台を去る。

寂しいけど、素晴らしいラストアルバムとなりました。

Nelson - Autograph



  

Posted by テン at 07:13Comments(0)N

2017年03月03日

ミュージカル的世界

メタルかどうか。
ハードロックかどうか。
いろいろなところで境界線を引かれることが多いわけですが、このアルバムもそういったターゲットになりそうな‥

DARK MOOR / PROJECT X



スペイン出身。
このアルバムは2015年リリース、節目となる10作目
タイトルの「X」は、この10作目という節目にも絡んでいるのでしょうか。

2ndアルバムである[The Hall of the Olden Dreams]では、「クサい。クサすぎて異臭騒ぎが起きるレベル」という評判で一気に知名度があがりました。
かくいうワタシも、このアルバムがキッカケでした。

が、そのアルバムの印象を強く支えていたエリサ嬢は次の3rdで脱退。
新たにアルフレッドを迎えて歩み始めたバンドは、その後、試行錯誤を繰り返しますが‥

6作目となる名作[TAROT]で確固たるスタイルを確立。
最近になって、まさかの来日公演を経て、今に至ります。


エリサ嬢が在籍していた頃は、スペインらしい情熱とヒロイックなパワーメタルで、その筋のファン(ワタシです)を狂喜乱舞させたわけですが、その後は若干シンフォニックな路線へシフト。
シリアスさも出てきて「なんだか落ち着いちゃったなー」と感じていた方も多いことでしょう。

基本的には、そういったシンフォニックな路線を継承したアルバムとなっています。
しかもコンセプトアルバムということで、その路線がフィットして統一感がある印象です。

こういったアルバムでは、時折「オペラティックな」という表現を用いるわけですが、オペラというよりはミュージカルを通して見ているような。
‥ミュージカル見たことないんですがね。
柔和でスケールの大きな世界観が描かれています。

そんな印象もあって、メタル感、もっと言えば、DARKMOORらしい濃厚なパワーメタル感は希薄。
もともとの「DARKMOOR像」との乖離もあって、冒頭のような「コレ、もうメタルじゃないんじゃないの」という印象を抱かれる方もいるかもしれません。


冒頭を飾る[NOVEMBER 3023]
近未来をイメージしたコンセプトアルバムの幕開けとしては申し分ないでしょう。
DARKMOORらしい昂りを期待させるイントロダクションです。

続く[ABDUCTION]。シリアスで適度なスピード感を伴い、スケールの大きなサビ。
最近の彼ららしい曲となっていますね。
オープニングとしては若干パンチが弱い感もありますが、まぁコンセプトアルバムの出だしと思えば問題ないでしょう。

そしてアルバムを象徴する曲といえる[BEYOND THE STARS]へ。
「・・なんだ、この明るくてポジティブなメロディとハーモニーは」と思ってしまいますが、何度も聞けば、むしろこういったイメージこそがこのアルバムを支えています。
バックコーラスもまさにミュージカル的。

[I Want To Believe]でも、劇場の中休み的なイメージ。
役者が一列にならんでコーラスしているようなシーンが浮かんできます。

[Bon Voyage!]も、[BEYOND THE STARS]と並んで、このアルバムを象徴する曲ですね。
穏やかな曲調の中にも、彼ららしい「クサさ」が溢れ出ています。
途中でまさにミュージカル的な拍手が入っていたりして、らしさと斬新さが共存する、フクザツな心境でありながらも惹かれていく。そんな曲です。
フックのあるギターも印象的。

強靱なリフでスタートする[Gabriel]。が、やはり徐々に穏やかなメロディに包まれていく構成が魅力的です。

ラストを飾る[There's Something In The Skies]
壮大なオーケストレーション。大仰なメロディと歌いまわし。
オペラのエンディングを思わせるような世界感。
かと思えば、QUEENを思わせるようなメルヘンチックなアレンジ。
さらには突如として[TAROT]時代を思わせるようなDARKMOORらしいクサいコーラス。

まさにこのアルバムを締めるのにふさわしい曲となっています。


:
:
:


なんとも評価が難しい、評価が割れそうなアルバムだなと感じました。
「ミュージカルのような」「オペラのような」という表現を多用してしまいましたが、まさにそういう印象のアルバム。
「パパン!パン!パパン!パン!」なんてリズムの拍手が入るメタル、あんまりない気がします。
メタルならではの、鋭利さや重厚さは控えめ。


とはいえ、彼ららしいメロディは全く違う形でではありますが、充分に聞くことができます。

個人的には、ここ数作で印象の薄かったアルバムたちに比べると、新しい個性、彼らのメロディを生かす一つの選択肢として提示されたこのアルバムは素晴らしいと感じました。
10作目という節目だからこそ、と思えば。
‥コレが続くと厳しいかなーとは思いますが。

なんだかんだで「どこを切っても、やっぱりDARKMOOR」と感じさせるだけの強いオリジナリティを持ってるんだな、ということも再認識できました。

エリサ嬢脱退後のアルバムが許容範囲の方であれば、一度手にとってみてもいいのではないでしょうか。


Dark Moor - Bon Voyage!










  

Posted by テン at 07:08Comments(0)D