変化。それは進化。

テン

2019年12月09日 07:49

このバンドの新譜を前にすると、高い期待値、高いハードルになってしまいます。
が、そのハードルを毎回軽々と越えてくる。
路線が変わろうが、メンバーが変わろうが、越えてきてくれるのです。

GALNERYUS [ INTO THE PURGATORY ]





ジャパニーズメタルシーンの代表格と言っていいでしょう。
とくに国内メロディックメタルの中では最高峰だと思っているバンドの‥もう12枚目になりますか。


YAMA-B期で5枚。
そして"SHO"こと小野正利が加入して7枚目。
もうすっかり小野さんのイメージが定着してきましたね。

アンダーグラウンド感を漂わせながらもワールドワイド志向だった初期。
日本語詩を交えつつ路線を模索したYAMA-B時代後期。

小野さんが加入し、一気にJ-POP的華やかさで彩られた小野さん前期。
そして、前々作~前作ではややダークな色彩と重い歌詞が印象的なコンセプトアルバム。

こう挙げていくと、好きな時期と苦手な時期があってもよさそうなものですが、私はどの時代も大好きだ。
そして毎回、「今回もスゲェ」と感嘆させられます。

二枚のコンセプトアルバムを経て、今回はコンセプトアルバムからは離れるとの報があった。
個人的には「小野さんの魅力が光る、VETELGYUS みたいなアルバムだといいなぁ」と、ぼんやりイメージしていました。

が、事前に公開されたMV [THE FOLLOWERS] は意表をつくものでした。

ヘヴィなリフ、YAMA-B時代を思わせるムード、今までに聞かれなかった小野さんの声。
いわゆる「ガルネリウス節」とは一線を画す曲調に「‥新譜、大丈夫か?」と思ったファンも多いのではないでしょうか。



そんな中リリースされたこのアルバム。

結論から言うと、コンセプトアルバムではないとはいえ、世界観は前々作~前作の雰囲気を踏襲しています。
その雰囲気の中でコンパクトになった分、YAMA-B後期のような触感を感じます。

そして楽器隊の難解でテクニカルなインストパートが印象的。
ヴォーカルの小野さんを含め、メンバー全員のテクニックが怒濤のように、けどバランスよく押し寄せてくるような圧力を感じます。


オープニングのインスト曲[PURGATORIAL FLAME]から導かれる[MY HOPE IS GONE]
ガルネリらしいスピード感で駆け抜ける、ガルネリらしい曲だ。
が、いわゆる小野さんのオープニングトラックの印象である(というか、期待している)「天空飛翔感」「ポジティブ感」はやや控えめ。
そういった意味では[RAISE MY SWARD]あたりに近いわけですが、さらに鈍色で鋭利になったアグレッションを感じます。

このアルバム全体に感じる、強靱な音のカタマリが雪崩のように襲いかかってくる威圧感とスキのなさ。
いい意味で息がつまる緊張感が漲ります。

ここ二作の路線をそのまま引き継いだかのように疾走する[FIGHTING OF ETERNITY]
勇壮な歌詞、勇壮なメロディは、すっかり耳慣れた安心感すらあります。

中盤に配された[NEVER AGAIN]~MVとなった[THE FOLLOWERS]は、[REINCARNATION]あたりの空気を感じて、YAMA-B脱退後のアルバムがこの路線でも不思議じゃないな‥と思わせる雰囲気。
事前公開された[THE FOLLOWERS]は、アルバムのこの位置に挟まれていると「この曲は必然だ」と思わせてくれる存在感。
ここまで印象が変わるのは衝撃的もあり、SYU「してやったり」の顔が目に浮かぶようです。

間髪いれず続く[COME BACK TO ME AGAIN]の強靱なリフは、[THE FOLLOWERS]のエンディングからの繋ぎかたでさらに魅力が増しています。

実質ラストとなる[THE END OF THE LINE]は、コンセプトアルバムではないと言いつつ、コンセプトアルバムのエンディングのような劇的さ。
ここ二枚のエンディングに近いものを感じつつ、[REINCARNATION]に於ける[THE FLAG OF REINCARNATION]的存在感でもあります。
ヘヴィなムードに包まれているアルバムの最後に優しい光が射し込んでくるかのような、仄かな温かさが心地いい。
こういう「温かさ」は、小野さんの魅力だなぁ‥と嬉しくなります。
SYUのソロパートも印象的で、超絶名曲[ANGEL OF SALVATION]での自由奔放なソロパートを思い出しますね。



‥と、やはり今回も期待通りの素晴らしさ。

が、圧倒的キラーチューンという意味では、ここ数作を思うと若干弱いでしょうか。
その代わり‥というわけではありませんが、アルバム全体のクオリティの高さは特筆すべきレベルだと思います。

ホームランバッターはいないけど、打率の高いバッターを並べたスキのない打線のような。

コンセプトアルバムではないので、ここ二作とは線をひくべき作品だろうなとは思うのですが、私の印象では完全にその二作に続く「三作目の続編」
前作が私のガルネリ史の中でも指折りのリピート率だったこともあり、ついそのアルバムと比べてしまいますね。

そろそろ[ENDLESS STORY]のような曲を‥という思いが脳裏をよぎりますが、SYUのことですからそんなファンの思いも織り込み済みでしょう。

私と同様にガルネリウスを愛している友人が「ガルネリの変化は、すべて進化」と話していましたが、的確な表現だなと思いました。
コンスタントにアルバムをリリースしてくれている彼ら。次の進化も目が離せません。


GALNERYUS – THE FOLLOWERS







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