彼らが
LOUDPARKの舞台に立ったのは2012年だったでしょうか。
例年、LOUDPARK終了後に
「ベストアクト」「ワーストアクト」といった感想が飛び交うわけですが、残念ながら彼らのパフォーマンスは
「ワーストアクト」がいつのまにか
「ワーストソナタ」に置換されていたほど。
そして、今年になってドン・ドッケンによって
「ワーストドン」となり、ようやくその足枷(?)が外れたようです。
ちょうどその頃のアルバムになりますね。
SONATA ARCTICA / STONES GROW HER NAME
リリースは2012年。アルバムとしては7枚目ですね。
このアルバム、正直、あまり聞いてなかった。
けど、
「ワーストドン」を目にして、
「そういえば、ソナタアークティカもワーストソナタとかってずっとネタにされてたなー」と思い出しました。
そして久しぶりに手にとってみました。
SONATA ARCTICAといえば、
1stの衝撃でしょう。
若さゆえの無尽蔵なエナジーで構築された爆発的疾走感と北欧ならでは煌き、そしてその青臭さ。
青臭いだけでなく、洗練されたメロディセンス。
1stにして既に
「SONATA ARCITICAとは何か」を強烈に刻み込んだ楽曲たち。
思えば、その後の彼らの方向性に対しての評価は、この時点でこのアルバムと対峙しつづける運命を決められてしまったのかもしれません。
着実にステップアップした2nd。
彼らの個性とチャレンジが絶妙に絡み合った3rd。
ステップアップした4th。
このあたりまでは「らしさ」(日本人が彼らに思い描く「らしさ」)が残っていた。
その後、彼らはその個性を過去の異物として新しい方向性を模索した。
そして問題作といわれる
[Unia]。
このアルバムがファンにとっての分水嶺だったでしょうか。
そして、その延長線上にあるといっていいでしょうか、このアルバム、上述のLOUDPARKのステージでも感じたことですが、実に北欧らしく、深みがあるのだ。
そして
トニー・カッコのヴォーカルも、初期の青臭さからは脱皮し、魅力的な声へとステップアップしている。
バッキングの装飾も派手になりすぎず、それでいてアクセントとしては輝きを放つ。
全体的には、繊細な光が絡み合って立体的に構築されているかのような。
危ういバランスのようで、実は綿密に組み立てられていて安心感を抱く。
そんな不可思議な印象のアルバムです。
オープニングはミディアムテンポの
[ONLY THE BROKEN HEARTS]。
ザラっとしたリフに続いて爪弾かれるキーボードの音色に彼ららしさを感じながらも、本能的に
「一曲目がコレか‥」と思ってしまいます。
SONATA ARCTICA = キラキラとした疾走感、という刷り込まれた記憶は、簡単には覆せない。
が、今改めて聞くと、穏やかで良質なメロディックハードロックだ。
彼らにそれを求めるかどうかは別にして。
[SHITLOAD OF MONEY]のメロディも悪くない。リズム感も独特だ。
美しいキーボードの音色に導かれ、アップテンポに展開していく
[LOSING MY INSANITY]は、以前の面影を感じさせつつ、大人になったSONATA ARCTICAの姿を映しだします。
[CINDERBLOX]ではウエスタン調のギターに違和感と不思議な心地よさを感じつつ、朗らかに疾走感していくメロディは、今までとは異なる魅力。
その違和感の中でも、やはりポジティブに疾走していくメロディはSONATA ARCTICAに求めている魅力のひとつ。
そういう意味ではこのアルバムの中では存在感を放ちます。
ラストを飾る組曲形式(?)の2曲は、彼らの懐の深さを感じさせる、複雑でテクニカルな曲。
以前の単調さ(←コレが魅力でもあったわけですが)が若気の至りだったかのような成長を感じさせます。
このアルバムを引っさげてのLOUDPARKでのステージングについては、そのときの感想にも書きましたが‥
成長した彼らの安定したパフォーマンス、幻想的なムードに彩られたステージング‥
思い入れを一切排除すれば、充分に魅力的なものだったと思います。
が、彼らのライブで求めるものではなかった。
今年の
SYMPHONY Xで感じましたが、
「いくら音楽性を変えようが、ライブで印象深い曲をチョイスしてくれれば盛り上がる」のは当然。
ワーストソナタ、と揶揄されたライブでは、それが圧倒的に足りなかった。
幻想的で落ち着きのあるステージングを、ファンは求めていなかった。
このアルバムも、そのあたりの思い入れによって評価は分かれるでしょう。
と、冷静に書いている私自身がそうだった。
数年経過し、今現在の彼らの姿を受け入れられるようになって(←今でも昔の音のほうが好きだけど)、改めて聞くと魅力は溢れている。
LOUDPARKで「ワーストソナタ」を体感した人にこそ、今、改めて聞いてみてほしい。
「・・ん?悪くないじゃんか。」と思えるのではないでしょうか。
が、
「やっぱり、ライブでこのアルバム中心ではダメだな」と再認識するかもしれませんが。
Sonata Arctica Cinderblox Live in Wacken 2013