紆余曲折過ぎて

テン

2011年01月12日 07:54

このバンドの再結成をブログで書いたのが2009年2月。


熱狂的ファンは別として、それまでの経緯を知る多くのメタルファン・ロックファンは「集金ツアーですかね」「レコード会社主導ですねわかります」という疑心暗鬼なトコがあったのは否定できないのではないでしょうか。
ナカヨシなフリしてるけど、ドン・ドッケ(以下略)、ジョージ・リン(以下略)と似たようなもんだろ。
そう思ってた人もいるのではないでしょうか。

かくいうワタシも、その一人。

まさかオリジナルアルバムまで出してくるとは。
で、そういうシチュエーションの時って、「契約の消化」のための「やっつけ仕事」だと、いくら「再結成」というヴェールを纏っても「バンドの本当の姿」をあぶりだしてくれる。
このアルバムもそういった危惧をしていたのですが、コレは意外と・・・・。


MR.BIG [WHAT IF...]




リリース前後の情報では「バンド史上最高傑作!」的なタタキを見かけることが多かった。
ま、そういう情報は信用しないし、逆に懐疑的に見てしまうヒネた人だ。ワタシは。

だけど、再結成アルバムとしては上々というか、予想外の出来でした。

感触としては1stに近いでしょうかね。

凄腕のメンバーが、凄いことを、凄くないかのようにサラリとやってのける。
ジャムセッションの延長のようなラフな印象を残しつつ、完成度の高いアルバム。
グルーヴ感とか、時折見せるブルージーな表情。
「ロック」であることを前面に押し出した力強さ。
1stアルバムがベスト!という方には、最高傑作になるかどうかは別にして、それに近い出来ではないでしょうか。

2ndアルバムがベスト!という方にはポップさとか、コマーシャルなメロディとか、ウェットでエモーショナルな質感が足りないなぁと思うかもしれません。

このあたりは、MR.BIGかくあるべし! という各個人のポジショニングの違いでしょうね。

個人的には、2ndが大好きなので、もう少しメロディアスな曲、そしてエリック・マーティンのセクシーかつ情感溢れる声を聞きたかったなぁ、という気がします。
ただ、メンバーが紆余曲折波瀾万丈を経て、今一番やりたかったことを、原点回帰して形にしてくれた、という意味では非常に大きな意味を持つアルバムであることは間違いないでしょう。

それに、本来MR.BIGってのはこういう音のバンドだったよね、ってのも理解できるし。
2ndが好きな方でも「うんうん、これはこれでMR.BIGだよね。好き嫌いは別にして、アリだよね。」と充分に納得できる出来ではないでしょうか。

そもそも、スピーカーからエリックの声、ビリーのベース、ポールのギター、パットのドラムが聞こえてくる・・・
そして、その全てが自由奔放でありながら強烈な個性を放ち・・・
それにも関わらず不協和音ではなくMR.BIGのバンドのサウンドとして存在感を見せる・・・
この「自由と余裕」がもたらす奇跡的ケミストリーが蘇っただけでも充分だと思うんだよね。

特にビリーとポールがイキイキしているように聞こえるんだよね。
楽器の生命力っていうか、ワクワク感というか・・・。
楽器やらないワタシが言っても説得力ないけどね。
二人の競演を聞いてると、見せかけの再結成じゃなくて、ホントにバンドとして復活したんだね、とウレしくなるよね。

「バンド史上最高傑作」かどうかなんて議論は置いといて、MR.BIGが帰ってきたなぁ・・・と実感できるアルバムです。


American Beauty





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