受け継がれる魂

テン

2014年09月29日 07:24

あの信じがたい訃報から、もう2年半近くが経過したんですね・・・。
バンドの中心であり象徴だった彼を失ったバンドに、「もうダメかもしれんね」と思った人も多いかもしれません。
が、バンドはその悲しみを乗り越えて、新たなスタートラインに立ちました!

RIOT / UNLEASH THE FIRE




アメリカ出身・・にしては、ヨーロピアンな空気も漂うHR/HMですかね。
何度かのメンバーチェンジ、そしてそれに伴う(?)音楽性の変移を経て・・・wikiによると、もう15枚目になりますか。

名作[THUNDERSTEEL]時代のヴォーカル、トニー・ムーアが復帰しての前作[IMMORTAL SOUL]では、そのアルバムタイトルの決意、そしてバンド名を冠した[RIOT]という鮮烈な名曲でRIOT復活を印象づけました。

が、その直後の2012年1月。リーダーであるマーク・リアリが病死。
まさに「これから再び」と思っていた矢先の悲報でした。

そして2014年。
マーク・リアリがいない。ヴォーカルも交代。そんな不安が募る中・・先行して公開されたアルバムジャケットは衝撃的なものでした。
サイバーかつマッチョなジョニー(例のアザラシね)の姿。
「うぉ!カッコいい!これはあのRIOTが帰ってくるぜ!」と思ったであろうRIOTファン。(と、ワタシ)
「アザラシ(笑)出たよ(笑)ダセェ(笑)。けどRIOTだな」と思ったであろう一般的メタルファン。
「・・・?」であろう一般的な人(まぁ、一般的な人はコレに触れる機会はないでしょうけどね)

そしてリリースされたアルバム。

結論から言えば、「とにかくRIOTらしいアルバム」という一言に尽きますね。
どこを切り取ってもRIOT。

もう少し突っ込んで言えば、音像としては多くの人が期待しているであろう[THUNDERSTEEL]時代のようなヒステリックかつアグレッションに満ちているサウンドではなく、シンプルなHR/HM(もっと言えばR&R的な)サウンドにRIOT色が散りばめられていた初期に近いかな、と感じました。

そう、RIOTといえばTHUNDERSTEEL的な攻撃力をイメージしてしまうのですが、全体の歴史でみるとそういったトンガった曲の方が少数で、正統派HM/HRがベースなんだよね。

そのRIOTらしさ、という点で特筆すべきは
[WARRIOR]に代表される初期。
[THUNDERSTEEL]に代表される中期。
[THE BRETHREN OF THE LONG HOUSE]あたりのストーリー性のあった時代。
それぞれその時代しか聞いていない人でも、このアルバムの曲を一聴しただけで「お、これはRIOTだな」と判別できるんじゃないかという点。
これって、実はスゴいことだと思うのだ。
マーク・リアリ亡き後、バンドが徹底的に「RIOTらしさとは何か」という原点を追求したであろうことが充分に伝わってきます。

歌詞の面でもFIGHT/WARRIOR/SHINE ON など、意図的に盛り込んだと思われるキーワードがテンコモリ。
そして[IMMORTAL][UNTIL THE MEET AGAIN]といったタイトルにもグッとくるものがありますね。

メロディの展開やギターのリフ(♪ジャージャージャージャージャーーーーー → ♪ドコドコドコドコ、ってリフ展開が個人的はRIOTらしくてスキ) も違和感ありません。
そして新ヴォーカルであるトッド・マイケル・ホールの声質はトニー・ムーアに近いこともその典型的RIOTサウンドに貢献していますね。

そういった姿を追求しながらも、単なる焼き直しではなく「現在のRIOT」を映し出している。
これまたスゴいことだと思うのだ。

その精神、クオリティという意味では、ANGRA[REBIRTH]に位置づけが似ているな、と感じましたね。

オープニングを飾る[RIDE HARD LIVE FREE]。イントロからもう「あー、RIOTだよ!」という叙情的メロディ。
そして切り込んでくるギターリフ。(さっきも書いたけど、ココの展開が大好き)
[METAL WARRIOR]での「♪SHINE ON METAL WARRIOR~」というサビは、RIOTファンなら「もー、RIOTだよ!」とニヤニヤしてしまいますね。
[FALL FROM THE SKY]での鋭利な感触は多くの人がRIOTに期待しているところででしょうね。コーラスで握り拳を掲げるとともに「おー、RIOTだよ!」と思ってしまいますね。

といった具合に、とにかくRIOTなのだ。

THUNDERSTEEL的なモノを期待している人にとっては、ややこぢんまりした(というか、典型的すぎてトンガってる感が乏しい)印象が残るかもしれません。
前作の[RIOT]のように「圧倒的存在感の、この一曲!」というインパクトも弱いかもしれません。
そういったこともあり、「全体的に優等生すぎる」といった感も漂います。

が、マークを失ったバンドが、これだけのクオリティで復活してくれたのは奇跡的ではないでしょうか。
アルバムを構成する曲の平均点の高さでは、過去屈指と言えると思います。

RIOTファンにとってはまず一安心。そしてマークを失って「・・RIOT、終わったな」と思ったメタルファンにとっては「やればできるじゃん!」という印象を残すことでしょう。

RIOTは今までいろいろな音楽性の変化をしてきました。
ホーンセクションを導入して物議を醸したり、シリアスな音楽性で「RIOTらしくない」と叩かれたり。
それでもワタシ個人はどの時代も大好きだ。RIOTだから好きなのではなくて、どの時代のサウンドも好きという単純なことだ。

ワタシの中で「好きなバンドだから、どの時代も好き」ってスタンスは基本的には存在しない。
そうした変移を経ても、どの時代も好き、どの時代のサウンドも自分にフィットする、ってバンドは意外と少ない。
パッと思いつくところではRIOTとRAGEくらいかな。

そのパッと思いつく二つのバンドが、今年のLOUDPARK14で揃い踏み(といっても日は違うけどね)します。

ボーナストラックに収録されたTHUNDERSTEELのライブバージョンを聞く限り、日本のファンの期待に充分応えてくれることでしょう。
いやー、楽しみだ!

RIOT- Ride Hard Live Free


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